大腸がん検診大腸がんは男女とも40~50代の働き盛り世代から増え始め、加齢とともに罹りやすくなるがんです。

がんの中でも一番罹っている人が多く、1年間に10万人以上の人が大腸がんと診断されています。特に女性に増えているんです。これってとても大きい数字ですよね。

しかし、大腸がんは進行がゆっくりなので早期であればほとんどが治癒可能です。少しでも早い段階で見つけるには検診がとっても重要なのです。

ここでは、大腸がんとはどういうがんなのか?大腸がん検診の流れやどういう検査をするのか?などくわしく解説していきます。

 

SPONSERD LINK

女性のがん死亡率第1位。全がんの中で最も罹りやすいがん

大腸がんとは、長さ約2mの大腸(結腸・直腸・肛門)の粘膜にできる悪性の腫瘍ことをいいます。

腺腫という良性腫瘍の一部ががん化して発生したものと、正常粘膜から直接発生するものとがあります。
日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。

大腸がんは、粘膜の表面から発生し、次第に大腸の壁に深く侵入していき、進行するとリンパ節や肝臓や肺など別の臓器に転移します。

すべてのがんの中でも大腸がんは男女とも1970年代後半から1990年代前半までは増加し、その後横ばい傾向です。

生涯で大腸がんに罹患する確率は、男性の10人に1人、女性の13人に1人で、2016年には約15万人の人が大腸がんに罹ると予想されています。

50歳代から増えはじめ、高齢になるほど高くなり、60~70歳に発症しやすくなっています。

大腸がんの罹患数は、男女合わせると全がんでは1位で、男女別ではともに2位となっています。
死亡者数は、男女合わせると肺に続いて2位で、男性では3位、女性では1位となっています。

● 罹患数の多い部位別のがん(2012年)

  1位 2位 3位 4位 5位
男性 大腸 前立腺 肝臓
女性 乳房 大腸 子宮
男女計 大腸 乳房 前立腺

● 死亡数の多い部位別のがん(2014年)

  1位 2位 3位 4位 5位
男性 大腸 肝臓 膵臓
女性 大腸 膵臓 乳房
男女計 大腸 膵臓 肝臓

出典:国立がん研究センター がん情報サービス 日本の最新がん統計まとめ

大腸がんの罹患数は死亡数の約2倍です。この数字は比較的生存率が高いことを意味しています。
進行度は比較的ゆっくりなので、早期に治療すれば治りやすいと言えます。

大腸がん検診の流れ

大腸がん検診の流れ

大腸がん検診では、地方自治体による検診の場合、便潜血検査を受けます。
便潜血検査は検便で、便に潜む血液の有無を調べます。

検査に異常があった場合、精密検査に進みます。
陰性と判定された場合は精密検査は行わず、1年後にまたがん検診を受診します。

自治体がん検診VS人間ドック どっちがいいの?比較表

大腸がん検診は格安で受けられる市区町村のがん検診の「対策型検診」と個人で受ける人間ドックの「任意型検診」があります。

「対策型検診」は特定の年代に発症が多く、早期発見による治療が確立しているがんを検診の対象としています。

一方、「任意型検診」は自分で希望するがんの検診をカスタマイズして受けられるのが特徴です。

大腸がん検診 自治体がん検診・人間ドック比較表

  自治体がん検診 人間ドック
対象年齢 40歳以上の男女 何歳でも検査可
検査項目 問診、便潜血検査 問診、便潜血検査、大腸内視鏡検査、オプションでPET-CT検査、S状結腸内視鏡検査、注腸検査(大腸バリウム検査)など
受診間隔 1年に1回 特に決まりなし
検査費用 便潜血検査は584円(自己負担額。市区町村平均) 便潜血検査 無料~2,000円程度、大腸内視鏡検査 6,000~16,000円程度(保険適用)/2~3万円(保険適用外)、 PET-CT検査10万円程度 、S状結腸内視鏡検査3,000円程度(保険適用)、注腸検査4,000円(保険適用)
メリット・デメリット 検診料は0~数千円と格安
検査項目が少ないので短時間で済む
× 検査項目が限られている
× 対象年齢にならないと検査が受けられない
× 検査結果が約1か月後と時間がかかる
多彩な検査が行なえる
年齢や回数に制限がない
その日のうちにある程度検査結果がわかる
食生活や運動などアドバイスが受けられる
× 自治体検診と比べ費用が高額

 

自治体がん検診では胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がんの5つで、費用は無料の場合もあり圧倒的に安く受けられます。しかし、家系や体質などでがんのリスクが高いと考える場合は、検査項目が豊富な人間ドックで検査するほうが無難です。

 

SPONSERD LINK





大腸がん検診の主な検査と費用

便潜血検査


便潜血検査とは、便に潜む血液の有無を調べる検査をいいます。いわゆる検便です。

大腸がんやポリープがあると、便が腸内を移動する際に便と組織が擦れて血液が付着します。そこで便を採取し、便に血が混じっているかどうかを調べ、目に見えないわずかな出血も検知することができます。

2日分の便を採取するだけなので、食事制限もなく簡単な検査です。

便潜血検査の検査方法

便潜血検査 検便キット検便キットは、提出用の袋、検査キット、トレールペーパーという便を採る時に使用する紙がセットになっています。
(こちらはさいたま市の便潜血検査キットになります)

トレールペーパーを水洗用便器内に敷いて排便をします。採便後はそのまま流せます。

こちらが検便用の容器です。

便潜血検査 検便容器1日目が青字ラベルで、2日目が赤字ラベルです。

あらかじめラベルに氏名などを記入します。キャップを回しながら引き抜くと、キャップの先端がギザギザしてた棒状になっていて、便の表面をまんべんなくこすり取ります。
採る量は先端のみぞに埋まるくらい。便を採りすぎると正しい検査ができないので注意しましょう。

キャップと容器の向きを合わせて差し込み、提出用袋に2日分を入れてすぐに提出します。

便潜血検査の注意点
  • 女性の場合、生理中は検便をしないでください。
  • トレールペーパーは、多量のトイレットペーパーと同時に流すと詰まる恐れがあります。

便潜血検査を受けた感想

いろはママいろはママ


毎日の排便時間のサイクルが決まっている人にはいいかもしれないけれど、排便の時間がバラバラだったり、外出する日が続くと検査のタイミングがなかなか合わないかなと。
あと、女性の場合、生理の日とぶつからないように。
私は生理の日に検査したため再検査になって2度検便をやるハメに。
検査自体は自宅でできるので楽でしたよ。自動水洗の便器の場合はコンセントを抜いて行うといいですよ♪

便潜血検査

検査時間:5分程度(便の採取)

対象部位:腹部

対象となる病気:大腸・食道・胃など上部消化管のがん

対象費用:2,000~4,000円(個人検診の場合)

重要度:

 

人間ドックで受けられる検査

大腸内視鏡検査(下部内視鏡)


大腸内視鏡検査(下部内視鏡)は、便潜血検査や大腸バリウム検査で判断がつかない、あるいは詳細に診断するときに行う検査です。
精密検査で行われる検査ですが、大概人間ドックではコースに含まれています。

ライトとカメラレンズのついた内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの全大腸を調べます。事前に腸内の洗浄や麻酔をしてから検査します。

ポリープなどの病変がみられた場合は、一部組織を採取し、悪性か良性かを判別します(病理検査)。
内視鏡で根治可能な早期がんと手術が必要な病変との判別も行います。

こんな人は大腸内視鏡検査を受けた方がいい

症状のある人

  • 便通異常(便秘・下痢・便が細くなった)
  • 血便・下血
  • 慢性の腹痛

これらの症状は病気のサインのことが多く、これらの症状の原因を探ることで病気に合わせた治療が可能になります。

人間ドックでも病気の疑いがあれば保険が適用になる場合もあります。
何らかの病名がついて、疑いがあると医師が判断すれば保険は適用されます。

大腸がんのリスクがある人

  • 大腸がん検診で陽性判定
  • 大腸がんにかかった家族がいる
  • 高身長・肥満など体格がいい
  • 飲酒が日課
  • 赤肉(牛・豚・羊の肉)・加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)をよく食べる

上記にあてはまる人は、大腸がんのリスクがあるため、症状がなくてもがんの早期発見・治療のために一度は大腸カメラを受けておきましょう。

苦しくない大腸内視鏡検査とは?

上記の大腸リスクに当てはまる、または気になる症状があっても、大腸内視鏡検査は肛門に内視鏡が入っていくので、「痛いのでは?」などと抵抗がある方は多いと思います。

痛みの感じ方は個人差がありますが、全く痛くないとは言いきれません、
しかし最近では鎮静剤を使用する内視鏡検査を実施している医療機関はあります。

鎮静剤を使用する大腸内視鏡検査は、ウトウトと軽く眠った状態で検査を受けることが可能です。
圧迫感やお腹を突き上げられるような苦痛を感じることないので、検査する医師も慌てず詳しく観察することができます。

鎮静剤を使わない検査の場合、患者さんの激しい苦痛のため十分に空気や炭酸ガスが入れられず、腸のヒダとヒダの間を十分広げることができず、大まかな病変がないかの確認だけで終わってしまいます。
反面、鎮静剤を使用する検査は、空気を十分入れることが可能になり、ヒダとヒダの間を伸ばすことができ、見逃しのない観察を行うことができます。

ただし、鎮静剤を使用できる熟練した技術のある医師を選ぶこと。
そして1時間ほど鎮静剤の効き目が切れるまで休息する必要がある為、すぐに帰宅できないので注意しましょう。
検査当日は鎮静剤の影響が少し残るため、車やバイクでの来院はできません。

大腸内視鏡検査

検査時間:20分程度

対象部位:腹部

対象となる病気:大腸がん、大腸ポリープなど

対象費用:15,000~25,000円(個人検診の場合)

重要度:

PET検査

全身の細胞の中からがん細胞だけにマーキングを行う検査法。全身のがん細胞を一度でチェックできます。
放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出します。ほかの検査で転移・再発の診断が確定できない場合に行うことがあります。

PET検査

検査時間:20~30分程度

対象部位:全身

対象となる病気:各種がん

対象費用:100,000~150,000円(個人検診の場合)

重要度:

 

精密検査

大腸がん検診(一次検査)で異常ありと判定されたら、精密検査(二次検査)を受けましょう。

大腸内視鏡検査(下部内視鏡)

便潜血検査で血液反応があった場合や大腸がんの疑いがある場合に行われる検査です。
人間ドックでも受けられます。

⇒大腸内視鏡検査の詳細はこちらから

大腸バリウム(下部消化管X線撮影)

肛門からバリウムを注入し、腹部の病変を調べる検査です。
がんの正常な位置や大きさ、腸の狭さの程度などがわかります。内視鏡が使えない時の代替検査として用いられることが多いです。

大腸バリウム(下部消化管X線撮影)

検査時間:20分程度

対象部位:腹部

対象となる病気:大腸がん、大腸ポリープなど

対象費用:3,000~10,000円(個人検診の場合)

重要度:

腫瘍マーカー(血液検査)

体のどこかにがんが潜んでいると異常値を示す血液検査の項目のひとつで、がんの種類に応じて多くの種類があります。
大腸がんではCEAとCA19-9と呼ばれるマーカーが一般的です。

腫瘍マーカー(血液検査)

検査時間:20分程度

対象部位:消化器系

対象となる病気:胃がん、大腸がん、肝硬変など

対象費用:2,000~4,000円(個人検診の場合)

重要度:

超音波(エコー)検査

大腸がんと周囲の臓器の位置関係、がんの転移の有無を調べます。

CT・MRI検査

治療前に転移や周囲の臓器へのがんの広がりを調べるために行う検査。
CTはX線を、MRIは磁気を使います。
最近では大腸CT(CT colonography)もよく行われています。
大腸内視鏡に抵抗感がある人の場合、大腸CTに切り替えることもあります。

 

まとめ

 

大腸がん検診

大腸がんは、全てのがんの中で一番罹患数が多いがんです。しかし、罹患数の割に死亡数が少なく、比較的生存率が高いがんです。
進行はゆっくりなので、早期で発見できれば治りやすいがんといえます。

大腸がん検診は、便潜血検査という検便が第一段階です。
自宅で採取して提出するだけと比較的簡単な検査です。
食事制限もないので、苦痛を感じるかとはまったくありません。

自分の身体を守る意味でも1年に1回、必ず検診は受けておきましょう!

SPONSERD LINK





※いろはママの検診の感想は個人の感想です。

監修者紹介

 

監修のドクター
この記事の監修

医療法人花仁会 秩父病院 外科部長

大野哲郎先生

専門は消化器・一般外科。平成12年群馬大学卒。医学博士。米国外科学会フェロー(FACS)。群馬大学大学院助教等を経て、平成25年に故郷である秩父市に戻り、秩父病院に赴任。腹腔鏡手術、上部下部内視鏡検査、早期癌に対する内視鏡治療、各種抗がん剤治療等に力を入れ、地域病院においても最新かつ最良な医療を提供できるよう日々努力を続けている。

参考文献・サイト

Facebook・スポンサーリンク