あなたは胃がん検診と聞くと何を連想しますか?
胃がん検診を受けた人から感想を聞くと、つらかった苦しかったとネガティブワードのオンパレードだから検診を受けることに躊躇してしまう・・・という方が多いと思います。
しかし、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は日々進歩していて、鎮静剤を使ったり、経鼻内視鏡という細い内視鏡を用いるなど、苦痛の少ない検査を導入した医療機関が増えてきています。
そう、胃がん検診は「苦痛の少ない検査」に変化を遂げようとしているのです。
これから胃がん検診を受けようと思っているあなたに、胃がんとはどういうがんなのか?胃がん検診の流れやどういう検査をするのか?などくわしく解説していきます。
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■ 目次 ■
胃がんは男性で一番かかっているがん
胃がんとは、胃の壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん細胞になって、無秩序に増殖して生じるがんです。
胃の壁で筋肉まで達していない胃がんを「早期胃がん」、筋肉の層まで達して深くなった胃がんを「進行胃がん」と呼びます。
また、スキルス胃がんという胃の壁の中で広がって粘膜の表面にあらわれない特殊ながんもあります。
スキルス胃がんは進行した状態で発見されることが多く、治療が難しいとされています。
胃がんの罹患率はすべてのがんの中で男性では1位、女性では3位で、男女比は2.5:1。
男性は女性より2.5倍胃がんにかかりやすいとされているのです。
胃がんにかかる人は男性が女性の約2.5倍!
出典:がん研究振興財団 がんの統計‘14
胃がんにかかる人が40歳代後半以降から増えはじめ、60歳前後で診断されることが多くなり、比較的高齢でかかりやすいがんと言えます。
胃がんの死亡率は全がん中2位で、男性では肺がんに次いで2位、女性では大腸、肺に続いて3位となっており、平成26年では男性で31.472人、女性は16.418人の方が亡くなっています。
しかし、以前に比べると胃がんで亡くなる人の割合は減少傾向となっています。
なぜ胃がんで亡くなる人が減っているのかというと、近年ではほぼ半数が早期のうちで発見されているから。
胃がんは早期で見つかれば治りやすいがんなので、がん検診を受ける意義は非常に大きいのです。
胃がん検診の流れ
胃がん検診では、地方自治体による検診の場合、問診と胃のX線検査(レントゲン)を受けます。
(上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)による検査を受けられる市区町村もあります)
人間ドックによる検査の場合、はじめから胃カメラを選択することができます。
検査に異常があった場合、精密検査に進み、本当に胃がんかどうかを確認します。
精密検査で胃がんと診断されたら(確定診断)、医療機関で治療開始します。
自治体がん検診VS人間ドック どっちがいいの?比較表
胃がん検診は格安で受けられる市区町村のがん検診の「対策型検診」と個人で受ける人間ドックの「任意型検診」があります。
「対策型検診」は特定の年代に発症が多く、早期発見による治療が確立しているがんを検診の対象としています。
一方、「任意型検診」は自分で希望するがんの検診をカスタマイズして受けられるのが特徴です。
胃がん検診 自治体がん検診・人間ドック比較表
自治体がん検診 | 人間ドック | |
---|---|---|
対象年齢 | 50歳以上の男女 ※胃部X線検査は40歳以上に対し実施可 |
何歳でも検査可 |
検査項目 | 問診、胃X線検査(バリウム) または胃内視鏡検査 |
問診、胃X線検査(バリウム)、上部消化管内視鏡検査 (胃カメラ)、腹部超音波検査など。ほとんどの人間ドックのコースには胃の検査も含まれ、胃部X線にするか、内視鏡にするかを選択できる機関もあります。 |
受診間隔 | 2年に1回 ※胃部X線検査は毎年実施可 |
特に決まりなし |
検査費用 | 胃X線検査は1500円位、上部消化管内視鏡検査は3200円くらい(自己負担額。市区町村平均) | 胃X線検査は10.000~15.000円、上部消化管内視鏡検査は15.000~30.000円くらい |
メリット・デメリット | 〇 検診料は0~数千円と格安 〇 検査項目が少ないので短時間で済む ✖ 検査項目が限られている ✖ 対象年齢にならないと検査が受けられない ✖ 検査結果が約1か月後と時間がかかる |
〇 多彩な検査が行なえる 〇 年齢や回数に制限がない 〇 その日のうちにある程度検査結果がわかる 〇 食生活や運動などアドバイスが受けられる ✖ 自治体検診と比べ費用が高額 |
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胃がん検診の主な検査と費用
ここからははじめての胃がん検診でドキドキのまことパパとがん検診受診マスター(元乳がん患者)のいろはママ夫妻が胃がん検診の様子をレポートします!
胃X線検査(バリウム検査)
胃X線検査(バリウム検査)とは、バリウムを飲んでX線で胃の形や粘膜の状態を見る検査です。
異常が見つかれば内視鏡(胃カメラ)でさらに病変をチェックします。
昨今、胃がん検診は内視鏡検査の方が中心になりつつあり、はじめから内視鏡検査を行う場合、バリウム検査は省略されることがあります。
胃X線検査(バリウム検査)の流れ
検査前日
前日21時から絶食します。
絶食する理由は、胃の中の食べ物やそのカスを胃から失くしていき、バリウムの付着を良くするためです。
バリウムがきれいに付着することによって凹凸(病変)が見つけやすくなります。
検査当日
検査開始3時間前まで100cc程度の水であれば摂取できます。
タバコとガムは厳禁です。
検査準備
➀ 発泡剤を飲みます
胃を膨らませるため発泡剤を飲みます。
発泡剤は胃を膨らます薬です。胃を風船のように膨らませ、胃の中のひだを伸ばすことによって、1mm単位の病変を発見することができます。
この発泡剤を薄めたバリウム10ccで飲み干します。
発泡剤を飲むと胃が膨らんでくるのがわかります。
それと同時に無性にゲップをしたくなります。
しかし、ゲップしたくなるのをひたすらガマンします。
なぜゲップをしてはいけないの?
ゲップをすると胃がしぼんで、膨らんだ胃の形を保てなくなり、小さな病変ほど見えにくくなってしまうからです。
ゲップをガマンするコツは?
発泡剤を舌先に触れさせるのではなく、舌の奥に全ての発泡剤を置いて一気に飲んでしまいましょう。
舌先で味わってしまうと発泡剤が気体になってしまってうまく飲み込めなくなって吐いてしまうことになるので注意しましょうね。
➁ バリウムを飲みます
120ccのバリウムを飲みます。
バリウムはドロドロとした白い液体状で、非常に飲みにくいです。しかも量が多いのでチビチビ飲んでいたら厳しいです。
ここは一気にゴクゴク飲み干してしまいましょう。
バリウムを胃の内壁全体に塗りつけることによって胃の状態を映し出します。
いよいよ検査開始!
検査台の上に立ちます。検査台が立った状態から水平になっていきます。両手で持ち手をしっかり握りましょう。
胃の壁にバリウムをくっつけるため、仰向けの状態から右回りでゴロゴロ横に3回転します。これを技師用語で「ローリング」といいます
次に検査台が横や斜め、逆さ吊りと角度を変えながら撮影していきます。
あお向けやうつ伏せ、横寝などいろんな体勢を指示されます。
検査終了後
検査が終わったら下剤を飲みます。
下剤は2回分。便秘の方には4回分渡されます。
まず検査後すぐに1回2錠をすぐ飲みます。下剤を飲んだら大量の水で流し込みます。
すぐに下剤を飲む理由は?
飲んだバリウムを早く体外に出すためと便秘防止のためです。
バリウムをうまく排出できないと、バリウムがおなかの中で固まってしまうの。
最悪の場合、セメントのように固まる場合もあるので注意しましょうね。
下剤の効果は個人差がありますが、おおよそ4~5時間位で出ます。
バリウムを出し切るのは翌日です。
はじめは白い便がでてビックリすると思いますが、通常通りの色の便がでたらバリウムが排出されたということになります。
バリウムを出し切るまでアルコールの摂取はNGです。
胃X線検査を受けた感想
とにかくゲップを堪えるのに必死。
それから検査中いろんな体勢になるのはいいけれど、逆さになったときは腕力いるなと感じたね。
僕は便秘気味だから、検査後になかなかバリウムがでなくて不安になったよ。
胃カメラはちょっと・・・という人はまずバリウムからならしてもいいかもね。
胃X線検査(バリウム検査)
検査時間:3~10分程度
対象部位: 腹部
対象となる病気:食道・胃など上部消化管のがんなど
対象費用:10,000~15.000円(個人検診の場合)
重要度:
内視鏡検査(胃カメラ)
内視鏡検査(胃カメラ)とは、口あるいは鼻からファイバースコープで胃の内部を直接見て、がんが疑われる病変の広がりや深さを調べる検査です。
疑わしき病変が確認されたら、その組織の一部を採取して、がん細胞の有無を調べる病理検査をします。
内視鏡検査(胃カメラ)の流れ
検査前日
21時以降の飲食は禁止です。ただし飲み水はOK。夕食は軽めに済ませましょう。
検査当日
検査当日は、食事・水を除くジュース等の飲み物、薬の服用は禁止です。タバコも禁煙します。
検査準備
① 義歯やコルセット、時計、メガネ等は外します
体をしめつけすぎるものはできるだけ外します。検査着を着ることもあります。
② 白い液体の薬(消泡剤)を飲みます
胃をきれいにする作用があります。あまりまずくはありません。
③ 喉に麻酔をします
喉の麻酔薬(液状)を口に含み、しばらくのどにためた後、ゆっくり飲み干します、病院によっては3~4回に分けてうがいをするタイプのものもあります。
シロップのように甘みがあり、まずくはありません。
徐々に喉に麻酔が効いてくるのがわかります。
いよいよ検査開始!
① 検査室に移動。検査台に左側が下になるように横たわります
胃の運動を止める薬や鎮静剤を注射する場合もあります
② のどにスプレーで麻酔をした後にマウスピースを口にくわえます
③ 内視鏡がマウスピースを通して挿入されます
④ CCDセンサーをつけた電子スコープで胃の内部を映像ですみずみまで観察します。
病変があれば、専用の鉗子で生検用の細胞を採取します。
つい力が入ってしまうので、力を抜いてラクにしましょう。唾液はそのまま外に出してかまいません
検査終了後
検査が終わって身支度を整えたら、少し休んでいてください。
検査後、撮影した画面を見ながら検査の結果を聞きます。
組織採取やポリープ切除を行った場合には、後日検査結果を聞くことがあります。
胃カメラ後はふらつくので、自動車での来院はできるだけ見合わせましょう
内視鏡検査を受けた感想
口からカメラが入っていくときは息をするタイミングがわからなくなって苦しかった~。
けれど、看護師さんが「ゆっくり呼吸して~」と言うので深く呼吸をしたら少し楽になったよ!でも苦しくてツライのには変わりないのよね。
まぁバリウム検査と違って検査後すぐに診断が出るから、二度手間にならないところが良かったかな。
今度は苦しくないと評判の睡眠導入剤を使う胃カメラ検査にしてみようかな♪
内視鏡検査(胃カメラ)
検査時間:5分程度・対象部位・腹部
対象となる病気:食道・胃など上部消化管のがんなど
対象費用:15,000〜30,000円(個人検診の場合)
重要度:
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人間ドックで受けられる検査
ABC検診
胃がんの発症の主な原因となるピロリ菌感染の有無と萎縮性胃炎(ペプシノゲン検査)を判定する検査。
採血だけでピロリ菌感染と萎縮の有無を検査できます。
胃がん自体を発見する検査ではありませんが、胃がん発症の危険度が判定できます。
採取した血液から胃の状態を4段階で判定し、胃がんに罹りやすい状態か否かを4群に分けて判定します。
早期発見、早期治療を目的とする他の画像検査と比較し、がんになる前にリスクを評価するという点において優れている検査といえます。
ABC検診
検査時間:5分程度(採血)
対象部位: 胃
対象となる病気:ピロリ菌、萎縮性胃炎など
対象費用:5,000円
重要度:
PET検査
全身の細胞の中からがん細胞だけにマーキングを行う検査法で、全身のがん細胞を一度でチェックできます。
放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出します。ほかの検査で転移・再発の診断が確定できない場合に行うことがあります。
PET検査
検査時間:20~30分程度
対象部位: 全身
対象となる病気:胃がん、十二指腸潰瘍など
対象費用:100,000~150.000円
重要度:
場合によって行われる検査
ペプシノーゲン検査
血液中のペプシノーゲン成分の量を測り、胃粘膜の萎縮度を見て、胃粘膜の炎症や胃がんリスクをチェックします。
ペプシノーゲン検査
検査時間:- 対象部位:腹部
対象となる病気:胃がんなど
対象費用:3,000~5.000円(個人検診の場合)
重要度:
ピロリ菌検査
胃炎や胃潰瘍などを引き起こす原因とされるピロリ菌の有無を調べる検査。
「呼気検査」「血液検査」「内視鏡検査」の3つがあり、なかでも二酸化炭素の反応を見る呼気検査が一般的です。
ピロリ菌検査
検査時間:20分程度(呼気検査)
対象部位: 腹部
対象となる病気:胃がん、十二指腸潰瘍など
対象費用:3,000~5.000円(個人検診の場合)
重要度:
精密検査
内視鏡で胃癌と診断されたら精密検査を受けましょう。
精密検査では、胃がんの進み具合(進行度)を確認します。
この段階では胃がんが確定し、今後どんな手術や抗がん剤治療を行うかという段階の検査になります。
超音波検査(エコー検査)
超音波を体の表面に当て、その超音波が体の中で反射する様子により、体の断面をみる検査。肝臓への転移やリンパ節転移、腹水の有無の検索に優れています。
CT・MRI 検査
治療前に病変の広がりや転移の有無を調べます。肝臓や肺などへの転移、リンパ節転移、腹水の有無の検索に優れています。
CT検査はX線を、MRI検査は磁気を使って体の内部を描き出します。MRIよりはCTの方が一般的です。
注腸検査
お尻からバリウムと空気を注入し、大腸の形をX線写真で確認する検査です。
胃のすぐ近くの大腸にがんが広がっていないか、腹膜転移が生じていないかを調べます。 また、同時にできている大腸がんがないかを調べます。
最近では胃癌の精密検査としては一般的ではありません。
まとめ
胃がん検診
胃がん検診ではバリウムによる検査と内視鏡による検査がありますが、精度ではバリウムは内視鏡には敵いません。
バリウム検査は胃表面の影を映すのみですが、内視鏡検査は胃の内部を精細な画像で観察できます。
内視鏡検査は口から入れるものが主流でしたが、近年で多いのが、鼻から挿入する細いタイプカメラ。
挿入は楽ですが、照度及び画素数が低く、より精密な診断を必要とする場合は口から入れるタイプの方が適しています。
そこで今注目されているのが、内視鏡検査時に睡眠導入剤を使用する方法。
点滴に鎮静剤を注入し、麻酔がかかり、うっすら意識がある睡眠状態で検査を受けます。
麻酔を使うことで、口から胃カメラを挿入した時の嘔気は無くなりますし、カメラが胃の内部を移動する時の不快感はないので、楽に検査を受けることができます。
人間ドックであれば、痛みや苦しみのない胃カメラ検査が受けられます。
胃カメラがどうしてもコワイ・・・という方は、鎮静下の胃カメラの検査がおすすめです!
ただし、鎮静剤の使用は呼吸が弱くなる等の副作用もあるので、検査中は心電図や酸素飽和度のモニター管理が必要です。事前の説明をよくきいてから受けるようにしてください。
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※まことパパといろはママの検診の感想は個人の感想です。
監修者紹介
医療法人花仁会 秩父病院 外科部長
大野哲郎先生
専門は消化器・一般外科。平成12年群馬大学卒。医学博士。米国外科学会フェロー(FACS)。群馬大学大学院助教等を経て、平成25年に故郷である秩父市に戻り、秩父病院に赴任。腹腔鏡手術、上部下部内視鏡検査、早期癌に対する内視鏡治療、各種抗がん剤治療等に力を入れ、地域病院においても最新かつ最良な医療を提供できるよう日々努力を続けている。
参考文献・サイト
- 胃がん―治療・検査・療養 (国立がん研究センターのがんの本)
- 【完全ガイドシリーズ120】 人間ドック完全ガイド (100%ムックシリーズ)
- 【完全ガイドシリーズ031】人間ドック完全ガイド (100%ムックシリーズ)
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