がんは日本人の死亡原因のトップです。
がんで亡くなる人は日本人の3人に1人で、死因第2位の脳血管疾患を大きく引きはなし上昇傾向にあります。
がんは死に直結する病気ではありませんが、それぞれのがんのタイプによって治りにくいがんもあります。
生活習慣や食生活などの改善でがんにかかりにくくすることはできますが、決して絶対にかからないとは言い切れません。
今回は、年齢別のがんの死亡率や、死亡率の高いがん、部位別のがんの死亡率の推移などデータを中心に解説します。
■ 目次 ■
がんは死因の第一位。3人に1人ががんで亡くなる
がんは、1981年から死因の第一位で、亡くなる人の約3割を占めています。
一生のうち日本人の2人に1人はがんにかかり、男性では4人に1人、女性では6人に1人ががんで亡くなります。
● 死因別死亡率の推移(1947年~2014年)
出典:がん研究振興財団 がんの統計‘15
第二次世界大戦後、結核や肺炎などの感染症は減少する一方、がんによる死者数は右肩上がり。
2015年予測ではがんによる死亡者数は37万人となっています。
がんの死亡者数は増加傾向で、2013年のがんによる死亡者数は1985年の約2倍となっています。
がんの死亡率は上昇する一方、75歳未満では減少傾向
日本の人口は減少傾向なのに、なぜがんの罹患率、死亡率共に増加しているのでしょうか?
それは人口の高齢化が影響しているといわれています。
高齢者の総人口の割合は、昭和25年(4.9%)以降上昇し続け、60年に10%、平成17年に20%を超え、28年には27.3%になりました。
がんは高齢になるほどかかりやすく、男女ともに50歳代くらいから上昇し 、特に60歳代から急激にがんで亡くなる率が高くなっています。
60歳代以降は男性が女性より死亡率が顕著に高くなっています。
● 年齢階級別罹患率死亡率(2013,2015年 全部位)
出典:国立がん研究センターがん対策情報センター資料
たばこが多くの原因である肺がんや喉頭がん、放射線被ばくによる白血病や甲状腺がんなどを除いて、ほとんどのがんは免疫力の低下がベースにあります。
高齢になるほど免疫力が低くなり、がんリスクは高くなります。
50歳代から体のあちこちに変調をきたすようになり、60歳代になり本格的ながん年齢を迎えます。
加齢に加えストレスや誤った食生活、冷えなど生活習慣や生活環境の低下ががん発症の原因です。
一方、高齢化の影響を除いた75歳未満年齢調整死亡率を見ると、1990年代後半以降、全がんの75歳未満年齢調整死亡率は全国的に減少傾向にあります。
2015年の75歳未満の年齢調整死亡率は2005年から15.6%も減少しています。
部位別では、肝臓がんが約49%低下、胃がんは約33%低下しました。
一方、子宮頸がんは約10%上昇、乳がんも約3%上昇しています。
75歳未満のがん死亡率が減少していると聞くと、「若いからがんで死ぬことはないのでは?」と思いがちですが、癌はすべての年齢に発症リスクはあります。
がんは、禁煙や食生活の見直しや運動習慣などでなりにくくする「予防」はできても、完全に防ぐことはできません。
がんに罹ったからといっても死に直結することはありません。ただ、自分は絶対がんにかかることはないという過信だけはやめましょう。
死亡数が一番多いがんは「肺がん」
2014年の部位別のがんの死亡者数は、全体で1位が肺がん、2位が大腸がん、3位が胃がん、そして膵臓がん、肝臓がんと続きます。
男性では1位が肺がん、順に胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん。
女性では1位が大腸がん、順に肺がん、胃がん、膵臓がん、乳がんとなっています。
● 死亡数の多い部位別のがん(2014年)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 肺 | 胃 | 大腸 | 肝臓 | 膵臓 |
女性 | 大腸 | 肺 | 胃 | 膵臓 | 乳房 |
男女計 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
出典:国立がん研究センターがん対策情報センター資料
年齢部位別がん死亡数割合(2014年)を見てみると、男性では、40歳以上で消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)の死亡が多くを占めますが、70歳代以上ではその割合はやや減少し、肺がんと前立腺がんの割合が増加しています。
女性では、40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの死亡が多くを占めますが、高齢になるほどその割合は減少し、消化器系(胃、大腸、肝臓)と肺がんの割合が増加しています。
部位別がん死亡率の年次推移をみてみると、男性では、膵臓が増加し、食道、胃、直腸、肝臓、胆のう・胆管、肺、前立腺、甲状腺、白血病が減少。
結腸、大腸(結腸および直腸)、悪性リンパ腫が横ばいです。
女性では、膵臓、子宮、子宮頸部、子宮体部が増加し、食道、胃、直腸、肝臓、胆のう・胆管、甲状腺、白血病が減少。結腸、大腸(結腸および直腸)、肺、乳房、卵巣、悪性リンパ腫が横ばいとなっています。
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がんの死亡率ワースト県は青森県。低い県は長野県
国立がん研究センターの調査によると、2014年都道府県別全がん死亡率が低い上位5県は、長野県、三重県、滋賀県、福井県、宮崎県でした。
一方死亡率の高い上位5県は、青森県、北海道、鳥取県、秋田県、佐賀県でした。
がんの死亡率が高い県を男女別でみると、男性は青森県、秋田県、鳥取県、和歌山県、北海道、女性は青森県、北海道、佐賀県、福岡県、長崎県でした。
一方、がんの死亡率が低い県を男女別でみると、男性は長野県、滋賀県、福井県、三重県、静岡県、女性は香川県、三重県、宮崎県、山梨県、新潟県でした。
長野県は1995年から20年連続で最もがん死亡率が低く、青森県は2004年から11年連続でワーストとなりました。
青森県ががん死亡率の多い理由の一つとして、喫煙率の高さがあります。
厚生労働省の2013年国民生活基礎調査によると、青森県の喫煙率は男性が40.3%で全国1位、女性が14.3%で全国2位です。
また、飲酒量の多さも挙げられます。2010年の国民調査・栄養調査では、一日1合以上の飲酒を週3日以上続けている「飲酒量の多い」男性は51.6%で全国1位です。
また、寒さに耐えるために塩分摂取量が高い食生活で、冬には激しい雪の影響で運動不足に陥りやすく、気候上野菜があまり収穫できないため野菜摂取量が少なくなるということが関連していると考えられています。
青森県ではがんによる死亡を20%減少させることを目標に「青森県がん対策推進計画」を策定し、早期発見、治療の促進に取り組んでいます。
一方、がんの死亡率が低い長野県は、地域ぐるみのがん対策への取り組みが挙げられています。
2013年のがん検診の受診率が肺がんで50%を超えるなど全国平均を上回っています。
喫煙率は男性では全国44位と喫煙率が低く、野菜の摂取量は男女で1位という理由が関連しているのではないかと言われています。
がんの部位別でも地域差が見て取れます。
胃がん・・・男女とも東北地方の日本海側で死亡率が高い
肝臓がん・・・男女とも西日本で死亡率が高い
肺がん・・・男女とも近畿地方および北海道で死亡率が高い
乳がん(女性)・・・北九州、東日本で死亡率が高く、中国・南九州・沖縄地方で低い
前立腺がん・・・東北地方北部で死亡率が高い
一概にがんで死亡する人が多いのは地域が関係しているとは言えませんが、都道府県別でがんの死亡率を見てみると、地域での習慣や食べるものの傾向が多少なりとも影響しているようにも思えます。
まとめ
がんの死亡率
今や日本人の3人に1人ががんで亡くなっています。
がんに死亡率は年々上昇傾向で、2015年予測ではがんによる死亡者数は37万人となっています。
死亡率の高い部位は、肺・大腸・胃です。
地域別のがんの死亡率のデータでは食べ物や習慣が影響していることは否めません。
がんリスクは高齢になるほど高くなりますが、決して他人事ではありません。誰にでも死亡リスクはあります。
がんを早期発見・治療することによって、がんの死亡率を低くする施策としてがん検診があります。
定期的に自分の身体をケアする習慣をもちましょう。
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監修者紹介
医療法人花仁会 秩父病院 外科部長
大野哲郎先生
専門は消化器・一般外科。平成12年群馬大学卒。医学博士。米国外科学会フェロー(FACS)。群馬大学大学院助教等を経て、平成25年に故郷である秩父市に戻り、秩父病院に赴任。腹腔鏡手術、上部下部内視鏡検査、早期癌に対する内視鏡治療、各種抗がん剤治療等に力を入れ、地域病院においても最新かつ最良な医療を提供できるよう日々努力を続けている。
参考文献・サイト
- 国立がん研究センターがん情報サービス 最新がん統計
- 国立がん研究センターがん情報サービス 年次推移
- 国立がん研究センターがん情報サービス 都道府県別75歳未満年齢調整死亡率
- がん研究振興財団 がんの統計‘15
- 看護roo がん死亡率都道府県別ランキング
- 青森県がん情報サービス 青森県の取組
- がんを再発させない生活術―きょうから始められる5つの習慣 鹿島田 忠史著
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